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酔狼通信 157
07. 2
 10日。JR、近鉄、JRと乗り継いで約5時間。紀伊長島駅。
 HUCCの後輩、激走りのΟ庫くんに誘われて東紀州へ。
 三重県だが、駅名通り、かつては紀伊長島あたりまで紀伊の国やったんやね。知らんかった。
 道の駅「紀伊長島マンボウ」で昼食。さんま寿司とマンボウの唐揚げ。少し寒いが外での食事が気持ちいい。マンボウは魚というより鶏肉に近い食感。

 天気は上々。
 Ο庫くんがデジカメで記念撮影。酔狼もデジカメを出して、レンズカバーをスライドさせる。レンズが飛び出す、いや、出てこない。あれっ?ん?
 バッテリーカバーを開けると中は空っぽ。充電した電池を充電器と一緒にしまい込み、カメラの中は空っぽや!
 県道581号線へ進もうとして迷路にはまる。三野瀬の先で「熊野古道、 始神峠」の標識に色気を出して入る。紀伊長島駅の写真ではなだらかな道だったが、しばらく行くと自転車は押せなくなり担ぎに。今さら引き返すのも大変だし、このまま峠越えをするのは、もっと大変。どないする?
 なんとか、国道への逃げ道を発見し、逃げ出す。

 海山町へ下り、県道734、さらに202へ。海山町内を走っていると、正月でもないのに家々の玄関に「注連飾り」が飾られている。道端でお喋りしていたおばさん達に「いつまで注連飾り、飾るん?」と、聞いたら、この辺りでは年中、注連飾りを玄関に飾るそうや。所変われば、やね。
 馬越峠を越えて尾鷲市。ここから国道311号線へ。八鬼山トンネルまでの上りがきつかった。九鬼へ下り、さらに海岸近くを上る。三木浦、三木里へ下り、また上り、疲れて今夜の宿、賀田の民宿「まさはる屋」にたどり着く。

 民宿は釣宿。大勢の客は皆釣り客。自転車のふたりを除けば熊野古道歩きのおじさんがひとり。


 11日。釣り客の朝は早い。5時に船は出たそうだ。夕食とはうって変わって三人の静かな朝食。
 快晴。出発の際、民宿の親父が写真を撮らせてくれ、と言う。送ります、とのこと(この写真14日にはクロネコメール便で届いた。すごい)。
pw15701.JPG
 少し冷たい空気の中、走り出す。飛鳥神社の森は暖地性の見事な森。
 曽根トンネル、梶賀トンネルの二本が完成し国道311号線はごく最近完全に繋がったそうだ。
 しかし国道とは名ばかりの細く曲がりくねった道路は、須野の先に「全長8m以上の車両 通行不能」の標識。確かに道路は狭く曲がりくねり、乗用車でも大変やな。須野―甫母間は車で走るのは相当覚悟がいる。
 おまけにアップダウンの連続で、二台の自転車は遅々として進まない。
 地図を開いてもらえば、国道311号線同様、JR紀勢本線もトンネルの連続で、この区間(尾鷲―熊野)が最後に開通したというのもウナズケル。
 さらにアップダウンを繰り返し、大泊で42号線に合流する。

 鬼ヶ城。海岸の岩場に打ち寄せる波はほぼ平均海水面と同じ高さに平らな面を発達させる。その後、南海地震などで隆起する。これを繰り返し、何段もの水平面を持つ奇景ができたんだとか。
 海岸線の階段状の遊歩道を1時間近く歩く。楽しい。
 自転車に乗らず、こうして観光すると、走っていないので休憩した気分になるが、実際は休憩になっていないので疲れる、んやな。
 国道42号線にはトンネルが多く、新しくなったトンネルの横には古いトンネルが歩行者自転車道として利用されている所が多い。交通量が多いのでこれはありがたい。
 熊野市街を抜けた所に「獅子岩」。昼食。ここまで約25km。3時間余りかかっている。アップダウンの連続でかなり脚も疲れている。
 予定は風伝峠、丸山千枚田、瀞峡を経て新宮まで60km余り。千枚田から風伝峠へ引き返す短絡ルートも真剣に考える。 
 42号線から今度は内陸部にルートを変える311号線に再び入る。西寄りの風が向かい風になり、また遅々として進まない。小さなアップダウンを繰り返し、風伝峠トンネルの入口に。「丸山千枚田方面全面通行止」の標識。
 災害復旧工事中とのこと。工事中でも自転車で行けなかった所は無かったので、取り合えず行ってみることにするが、予定の風伝峠旧道はパスしてトンネルを抜ける。
 丸山方面に向かう分岐に「全面通行止め」。等高線沿いとの道路の読みも、じんわりと上りが続く。
 千枚田の直前に工事区間。道路が崩壊しているが山側はなんとか進める。千枚田はあいにく冬なので、米の季節ほどは見栄えがしないが見事な物だ。
 残り40km余り。時計は2時を指す。5時過ぎには宿に着けるやろ、予定通り行こか。

 急勾配の千枚田の中の道路を下る。瀞大橋。下流にウォータージェット船乗り場。「ジェット船輪行」?道路は川沿いに下るが、この先、169号線に合流する前に峠がある。疲れた脚に堪える。上りの途中、ちらりと見える瀞峡をジェット船が走って行く。あぁ。
 峠を上りきると「奈良県」の標識。あとは本当に川沿い、上りはあってもたいしたことはないはず。
 169号線と合流、次いで168号線に。ここから一気に交通量が増える。上流に熊野本宮大社、川湯温泉など観光の車が多い。少々走りづらい。おまけに山がけわしく川沿いは早くも日影になり、少し肌寒くなってきた。

 予定通り、5時過ぎに新宮にたどり着く。宿に向かう途中に熊野速玉大社へ。
 が、実際に見るのは初めて。でもフィルムは使い切って写真がない! 風呂へ入って生き返る。居酒屋「やすあがり」で夕食。生ビール二杯、焼酎お湯割り二杯。


 12日。近くの新宮城趾へ散歩。
 今日は雲ひとつ無い快晴。走り始めは、まず浮島の森へ。文字通り島が浮いているそうだ(最近は水質が悪くなり、一部座礁している)。泥炭層のなんちゃらかんちゃら‥‥、興味のある人はご自分で(酔狼はうまく説明できない)。
 浮島の上へ入れるのだが、時間が早すぎて断念。残念。
 酔狼は那智大社を目指す。行ったことのあるΟ庫くんは「途中、温泉入って時間つぶします。太地駅で合流しましょう。」で、ひとり那智大社へ。

 大門坂の下まではなだらかな勾配だが、ここから一気に勾配がきつくなる。つづら折れの途中で那智の滝がちらりと見える。那智大社を目指すというより、この滝が酔狼の目当て。
 つづら折れをなんとか上りきり、那智大社の参道の石段を歩いて上る。朝、まだ早いが観光客で一杯や。
 鬼ヶ城で使い切りカメラを買うたんやが、調子に乗って取りまくり、残りのフィルムはわずか4枚。よく写真で見る、赤い三重塔と那智の滝。デジカメの3倍ズームが欲しい。

 青岸渡寺は西国第一番の札所。
 滝壺まで歩いて行けるんやが、冬やし、Ο庫くんが待っているし、パスやな。急坂を一気に下る。冷やっ。
 国道の手前に補陀洛山寺。補陀洛渡海の話には酔狼興味津々。
 Ο庫くんの待つ太地駅を目指すが、勝浦漁港へ寄り道。魚市場にはマグロがゴロゴロ転がっている。TVではよく目にする​光景。
 太地駅でΟ庫くんと合流。途中の温泉に入ってビールも飲んだとか。お待たせ!
 42号線は車が多く、少々走りづらい。海の景色は素晴らしいのだが、向かい風が強く、楽しむゆとりがない。古座あたりで昼食と思っていたが、国道は町を迂回して抜け、食事のできる店がない。橋杭岩まで行こうか。
 橋杭岩。マグロ丼、ビール。​うまいっ!
 今日の最終目的地串本はもう目の前。串本市街へ入り、さらに潮岬を目指す。本州最南端。「激坂があるらいしですよ」とのΟ庫くんの情報に、どっちから回ろうか?ま、素直に東から行こうか。
 潮岬のすぐ手前、広大な芝生の広場の先に「本州最南端」の碑。
 すぐ近くに潮岬灯台。灯台の見学ができるようだ。灯台を見ると、灯台上部の回廊に子供の姿が見える。あそこまで行けるなら、見に行かな。入場料大人150円、子供20円。普通、子供は半額やろ?券売所のおばさんに「子供料金で入られへんかな?」と言うと、「そないひねたら、あかんわ」と笑って応える。
 灯台の中の螺旋階段を登る。今回のどんな上りよりもきつかった。脚が張るころにようやく上部に。外の回廊に出ると風がものすごく強い。そして高くて恐い。あ~、恐っ。
 串本駅近くの温泉へ。
 自転車を分解し輪行袋に収め、近くのファミレスへ。「生ビールふたつ!」
 特急列車は満員。白浜駅から三両増設。車窓に梅林。「途中でもあちこち咲いとったやろ?」「え?そんなん、ありました?」
 楽しかったなぁ、また走ろう。
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