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酔狼通信 285
22.01
「西予、再び」の巻
いつものことやが直前になって計画をまとめ宿を取る。
2日、始発で播州赤穂を発つ。青春18切符の旅、相生、岡山、坂出、観音寺、伊予西条と乗り継ぎ松山のひとつ手前、三津浜駅で自転車を組む。すでに昼を回っている。
今日の泊りは宇和島なんやが、そのまま列車で行ったら宇和島着1630。天気が悪ければ、それも仕方ないと思っていたが、走れそうな天気なので途中、少し走ることにする。
少し走って三津浜港。ここに「三津の渡し」がある。渡し舟、好きなんよね~
三津浜駅からそのまま南下すればいいものを、わざわざ少し遠回りして、渡し舟に乗る。
乗船時間は1,2分。あっと言う間に対岸へ。
そこから県道を南へ。松前(まさき)町、伊予市、国道の100mほどの峠を上る。峠の少し手前で休んでいた(?)中学生を追い越すが、峠付近、勾配が緩んだところで脚を休めていたら追い越された。
少年の後ろをゆっくり下っていたら、前で少年が転んだ。車がすぐ前にいたが接触したふうには見えなかった。すぐに、走りよると、少年は立ち上がる。「大丈夫か?どこもケガしてへんか?」「ライトが」
転んだ弾みでか、ライトの蓋が飛んで電池が飛び出している様子。彼の自転車を持つ間に、少年はライトの蓋、電池を道路から拾い上げる。
再度、ケガの無いことを確認し、自転車のハンドル、ブレーキなどの異常がないことを確認する。
「平らな所までゆっくりゆっくり下ろか」
ゆっくりゆっくり下って平らな所へ。
「どこまで行くん?」「シーサイド公園までです」「どこから来たん?」「伊予市です」
じゃ、シーサイド公園まで一緒に行こか。
3,4km走ってシーサイド公園へ。帰りも気を付けて走ろうな、とここで少年と別れる。あ~、よかった~。少年はもちろんよかったし、爺さんも正月早々目の前で事故を見なくて済んだ。あ~よかった~
シーサイド公園から5kmほどで下灘駅。海を臨む下灘駅は今は写真撮影の人気スポット。今日も駅前に多くの車が停まり、構内は入れ替わり立ち替わり写真撮影。
ここで自転車を再び袋に入れ、列車に乗り込む。列車到着までの1時間余り、ホームの隅で文庫本を開く。
下灘駅、夕日のスポットでもあるが、冬のこの時期は山影に日が沈むため、夕日は映えない。
1638発の一両の下り列車に乗り込んだのは酔狼を含め4人。車内はがら空き。八幡浜駅での乗り継ぎ時間がほぼ1時間。1857発のやはり一両の宇和島行き(観音寺以降は全て一両、トイレ無)に乗ったのは3人。途中で1人入れ替わり、1955宇和島で下車したのも3人。いつまでこの路線が維持できるのか大いに不安。
駅のコンビニで夕食を買い込み、すぐ前のビジネスホテルへ。
途中30kmほど走ったものの移動時間が14時間余り。さすがに疲れた。そろそろ、こういう無茶は無理やなと、つくづく思う。
3日。
自転車を組み宇和島の市街地を抜け遊子水荷浦の段畑を目指す。ここは に一度走ったことがあるんやが、その後も酔狼の「走りたい所リスト(走ったことがなく行ってみたい所、以前走ったことがあるが、もう一度走りたい所)」にリストアップされている所の一つ。今回のツーリングのメインテーマ。
海沿いに出て、三浦半島を二度横断。あれっ?こんな坂あったっけ?ま、それだけ脚力が落ちたってことやろな。
水荷浦の段畑は、やはり圧巻。先人の努力、そして、そのときどきの人々の維持する努力。まったく頭が下がる。段畑の中の細い道を上り、段畑を満喫する。
さて、来た道を引き返し宇和島市街へ戻る。途中から海沿いのルートに逃げ込み市街地へ。
宇和島城。再訪。前回は南側から登城したので今回は北側から。現存十二天守のひとつ。酔狼、最近城廻りもひと段落という感じやけど、ここは外せない。
ひと巡りし昼食。名物鯛めし。出汁と卵を鯛の刺身と共に溶き温かいご飯にかけて食べる、言わば贅沢な卵かけご飯。鯛の刺身たっぷり。うまい。ビールもうまいっ!
午前中50km、午後のコースは30kmほど。しばらく国道を走り、吉田の先の上り途中から旧道に入り法華津峠を目指す。
今回のツーリングで目を引いたのが、この形のしめ縄
どうやら宇和島付近の特徴的なものみたい
各地を巡って、こういうのに出会うと嬉しくなる
旧道は期待通り。車はまったく走らず、程よい勾配。路面もまずまず。でも脚はいっぱいいっぱい。情けないなぁ~
ようよう峠へ。しかし自然歩道の案内板が判りづらい。ま、取り合えず展望台へ。幸い、そこにいた地元の方に正しいルートを教わり一安心。
展望台からの眺めもえぇなぁ。ま、さっきまでアップアップやったけど、後は下るだけやから、気持ちのゆとりが違うからやろね。我ながら単純な奴やなぁ~と。
林間の旧道を下り卯之町。重伝建地区をぶらり。あいにく正月の三日。資料館などはまだ閉館日。
宇和米博物館の109mの長い廊下。雑巾がけレースが行われる
普段も体験ができる。当然、酔狼も前回走った際にはチャレンジし惨めな結果になった
この日は早々に宿に入る。「お正月なので、これはサービスです」と地元産のミカンジュースの四合瓶を頂く。普段なら自転車旅でバックに余裕がないのでとお断りするんやが「お正月なので」の一言で断りがたく、サドルバックに入るかもと思い、有り難くいただく(幸い瓶の首が飛び出しつつもサドルバックになんとか入った)。ありがとうございます。
いつものように早々に汗を流しビール、洗濯(この日は宿がやってくれた)、早い夕食、ビール、そして酎ハイで早々に眠る。
4日。
今日のコースは昨日よりも抑えめ。でも早朝宿を発つ。県道を走り旧三瓶町を目指す。トンネルの脇から旧道を上がり(旧道好きやなぁ)古い隧道を目指す。初日の渡し舟に負けず古いトンネルもお気に入り。
大正時代に造られた煉瓦の三瓶隧道は期待通り。灯りの乏しい暗い隧道を抜ける。
三瓶隧道までは100mほどしか上っていないが昨日の法華津峠の貯金があるので海岸沿いまで300mほどの長い下り。下りは嬉しいが寒い。寒い。
海岸沿いまで下れば後は楽勝と思っていたが、強い向かい風、ときに横風に苦しめられる。楽勝コースと思っていただけに落差が大きい。休憩したいが吹きっさらしの場所ばかりで、なかなかいい休憩場所が見つからない。走りながら、もう今夜の宿もキャンセルして帰ろうかとか、八幡浜から泊る予定の大洲までの国道は走りたくないから距離は無いけど列車で移動しようかなとか、弱気なことばかり考える。
ぐだぐだ思いながら、ずいぶん走ったところの町で海岸沿いの道路から一本中の旧道に逃げ込みバス停のベンチで休憩。傍にある大きなミカンの選果場で風が遮られ、ほっと一息。
選果場(集荷場?)には大勢の外国人技能研修生の姿が見られる。播州赤穂の近辺の牡蠣の養殖、殻剝きなども外国人技能研修生に支えられている。日本の農業、漁業、そして中小の製造業の多くはこの制度で成り立っている。「それってどうなのよ?」と酔狼は思うが、思うばかりで考えは先には進まない。
ようやく一息入れて先へ。
八幡浜。港の道の駅。前回走ったときは正月三日で休館中やったんで三年越しの入店。
11時とまだ早いが、すぐ傍の食堂で昼食。今日もご当地名物、八幡浜チャンポン。とにかく温かいものが欲しい。
あ~~、温つたまる~~
八幡浜チャンポンであっさり生き返り、国道はやはり走りたくないので、ここも旧道の夜昼峠を目指す。
この日、天気予報は「晴れ」やったが、朝からほとんど陽は射さず、夜昼峠の昼側(八幡浜)もほぼ陽が射さないので今日は夜夜峠。
夜夜峠を越えて夜側(大洲)を下る。八幡浜側は峠付近まで集落があるが、大洲側は民家はほぼ無く、路面に落ち葉、小枝も多く、ゆっくりゆっくり下ったので、長~い長~い下り。
ようやく下り、少し走って大洲の城下へ。ここも外せない大洲城。見事な木造復原天守。
町を少しぶらついて早々に宿に入る。
宿には大きな風呂もあり、一番風呂を独り占め。
風呂上がり、ビール、洗濯。早い夕食、ビール、そして酎ハイは定番。お休み~
5日。
今朝の狙いは長浜の「肱川あらし」
でも、昨日今日の天気で「あらし」は期待できそうにない。
肱川あらしは、冬の時期、晴れて冷えた朝、大洲盆地に発生した霧が肱川沿いに真っ直ぐ河口の長浜に下り、長浜で文字通り「あらし」のように吹き荒れる現象。
でも、せっかくなので一縷の望みを持って暗い中、宿を発つ。
長浜に向かって走るうち、あらしは起こらないと確信する。幸い、朝の冷え込みはあまりなく、冬の朝にしては走りやすい。でも残念。
3km先から赤橋が確認できた
期待したのは 荒ぶる波が判ります?
時間的にはまだ先まで走れたけど伊予長浜駅で自転車をばらし輪行。松山へ。
松山で一旦自転車を組み松山城へ。
いやぁ、やっぱりここも外せない。現存十二天守の一つ。比高差100mの城山を登る。
何がと言われると、少々困るが、えぇなぁー松山城。
松山駅で再度自転車を袋に入れ18切符の旅。
伊予西条駅で乗り継ぐ。乗車しようとすると駅員に何やら尋ねている人がいる。一見して、外国人技能研修生かな?でも、まだ困っている様子?
乗車し傍にいたので「ドコ?」と尋ねると「ニイハマ」
この列車で(一両やけど、ね)間違いはないけど、と壁の路線図を確認する。「ニバンメ」言葉とVサインで説明する。「ドコカラキタノ?」「クニ?ネパール」「キョウ、シゴト、ヤスミ?」「マダ、ニホンキテ、イッシュウカン」「ソウ、ゲンキデ、シゴト、ガンバッテネ」
偉いよなぁ。片言とはいえ、日本に来る前に、日本語勉強して、日本に来てまだ一週間なのに一人で電車に乗って。偉いなぁ~、爺さん勝手に思いを寄せ、思わず涙が出そうになる。お前が泣いて、どないするねん!!
ほどなく新居浜駅着。ワンマンカーの仕組みを言葉足らずに説明し見送る。元気でね。頑張って、願わくは楽しく仕事してね。爺さん、勝手に涙ぐみそうになる。
あとは乗り継ぎを重ね播州赤穂へ。
あ~疲れた。さて、あと一回残った青春18切符。来週はどこへ行こうか??
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