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酔狼通信 291
23. 1
 いつものように年末にバタバタと計画して年始に走る。

 

 3日。
2回分余っている青春18切符を使い播州赤穂から延々12時間、岡山、広島、山口、福岡と通り過ぎ佐賀県鳥栖にたどり着く。さすがに疲れた。太陽は車窓に昇り沈んだ。
 4日。
 鳥栖発鹿児島本線から久大本線に乗り入れる列車で筑後大石駅までほぼ1時間。
 自転車を組み走り始める。

 

 筑後川を渡り、ほんの少し東へ向かう。コース計画中、ロードマップに貼り付けたポストイットに「杷木神籠石(こうごいし)」を見つけ、脚を伸ばす。

 国道端にある第一水門。山中に列石が続く(点在する?)が、そちらは諦め、サイクリング。
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 筑後川沿いに少し下った所に山田堰。
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 長年アフガニスタンで医療、灌漑活動をされて、19年、凶弾に倒れた中村哲さんが現地の灌漑工事の参考にされた江戸時代に造られた取水口のための堰が山田堰。

 

 酔狼、    すぐ傍を走ったことがあるんやが、正に「人は見たいものしか見ようとしない」。
 その時には、山田堰で取水された水路にある三連水車が見たくて、この辺りを走った。本当にすぐ傍を走りながら、山田堰は眼中に無かったんやね。山田堰も中村哲さんも中村さんが凶弾に倒れたニュースで初めて知った。

 

 山田堰。本当に昔の人の知恵はすごいなぁ。いろんな物を目にする度に人の知恵の積み重ねに感心させられる。それに比べ現代の技術(敢えてテクノロジーと言ってみようか)はどうなんやろ?あまりに進み方が激しく、テクノロジーの進歩に伴う欠点が取り除かれることなく進んでしまっているような気がしてならない。例えば原子力の問題とか。
 などと思いつつ、山田堰で取水された用水路沿いに走り三連水車を横目に筑後平野を西へ。

 

 基山町。基肄城(きいじょう、きいのき)。杷木神籠石同様、古代山城。大宰府を守る水城を挟み     と対を成す山城。大野城は以前登城し、そのときから基肄城も気になっていた。
 水門から山上へ歩いて登る。山中に大きな礎石群。山頂付近は中世山城、そして今は草スキー場。博多湾、筑後平野が一望できる。
 2時間余りの山歩き、脚にくる。
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水門
 山を下り10kmほど走って鳥栖の宿へ。風呂に入って生き返る。

 

 

 5日。
 8時前、宿を後に、久留米の市街へ。久留米はやはりインターハイの思い出が。ま、もうほぼ覚えていないけどね。74年かぁ、もう50年近く前になる。
 高良大社。目的はここも神籠石だったが、歩き始めた参道が素晴らしく山上の高良大社まで登ることにした。
 

 参道の石段、切り込まれた岩盤、神社の石垣、本殿下まで車道が続くが参道があれば参道を歩きたい。ま、自転車で車道の急坂を走る気が無かっただけやけどね。
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次いで八女市、小さな峠を越えて石橋へ。市街地を抜け車の少ない道路が心地いい。洗玉橋。
 もうひとつ小さな峠を越えて黒木地区は重要伝統的建築物群(重伝建)。ん~、でもちょっと期待外れ。昼食、ラーメン。これでもかと言うくらい不愛想な店主。熱いスープで生き返る。

 予定のルートを走りつつ、以前訪れた八女の八木地区も近いことに気付く。ここも重伝建地区に指定されている。訪れたと言っても、ほぼ素通りしたようなもの。往復10kmほど、時間もあるし寄り道しよう。
 次いで女山神籠石。「ぞやま」とは絶対読めない。
 ここも山麓の水門でお茶を濁す。朝の高良大社の参道で脚は使い切っている。

 

 

 今夜の宿の柳川へ。水郷柳川、堀巡りは明日の朝と思っていたが、今日中に済ませとこ。ま、ここも以前走ったので、今日は流すだけ。
 宿に入り、熱い風呂で生き返る。夕食は柳川名物うなぎ。
 二日間、好天が続いたが明日の予報は午後には崩れ、雨の可能性も。予報を見るたび、雨の降り始めがコロコロ変わる。

 

 

 6日。
 雨に備えて、寒いが7時半に走り始める。
 柳川の隣町 、大川から筑後川対岸に架かる旧国鉄佐賀線の昇開橋。再訪。
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 舟を通すときに昇降部分を上げていたと思っていたら、列車が通るときに昇降部分を下げていたんだそう。

 

 橋のほぼ中央、昇降部分の傍に係員の詰め所。その前の机に保存のための募金箱。硬貨が落ちる音に反応して係の方が出てきて、説明、昇降部分を作動してくれた。
  昇開橋は自転車を押して渡り、そこから旧佐賀線跡のサイクリングロードを走る。
 
 佐賀市街を抜け小城、多久。小城を過ぎた頃から前方はいかにも雨になりそうな空模様。
 武雄温泉。先日の温泉津温泉は朝から入湯したけど、今日はその気にならなかった。温まっても、走れば瞬間に冷めてしまうしなぁ~

 

 

 武雄神社、大楠。大楠の姿には自然と頭が下がる。
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 食堂を探しながら走るが見つからない。しまった、武雄の町中で食べるんやった。

 

 塩田津(重伝建地区)に入ったところに食堂。「チャンポン」の文字。チャンポン食って温まろ、と思ったが店は開いているのに誰もいない。付近を少し見物して再度店に入るが誰もいない。諦めて先へ。

 


 町並みの中ほどを過ぎた所に、もう一軒。ようやく昼食にありつける。江戸時代に建てられた古い建物。
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 塩田津を後に、鹿島市内の肥前浜地区を目指す。ここも重伝建地区。今回のツーリングは古代山城四城、重伝建地区四か所。
 海から少し離れた塩田津も川港だったが、肥前浜は正に有明海の傍の港として栄えた地区。今も多くの酒蔵があった。生憎酔狼はビール党。酒の違いは判らない。ん?ビールの違いも判らんやろって!

 


 町並みをぶらり。天気はなんとか持ってくれた。
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 肥前浜駅で輪行。1,2時間おきの列車を1時間あまり駅舎で待つ。乾いた服に着替え、ぼぉ~っと。
 鳥栖まで輪行し、今回鳥栖で三泊目。ホテルの方に「自転車でどこを回られたんですか?」と好奇の目で尋ねられる。
 いつものように早い時間の風呂、ビール、食事で早々に寝る。

 

 

 7日。
 夜中に降った雨は朝、ほんの少し残っていた。
 青春18切符の最終回を使って、早朝5時半の列車に乗り、今日は13時間余り。さすがに尻が痛い。走っている最中も尻はサドルの上にあるからね。
 乗り継ぎの時間に余裕のある度に、かつては特急列車も停車した長いホームを端から端まで歩いて体をほぐす。

 

 ま、いつまで楽しくサイクリングができるか判らんから、走れるうちに走っとこ。

さ、次どこ行こうかな?

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