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酔狼通信 141
05.06
昨年末、HUCCの先輩西川さんが亡くなられた。
最後に一緒に走ったのは00年のOBランになった。
楽しく走って、当然そのときの酔狼通信があるはずなのだが、そのときは酔狼通信を残さなかった。
その前にご一緒した96年のOBランの酔狼通信で、かなり西川さんを「ちゃかして」書いた。それで00年のときには酔狼通信は書かなかった。
今思えば。そんなこと思わずに、そのとき感じたことを残しておけばよかったと思う。
遅ればせながら、そして、直後の興奮もなく綴ってみよう。
ということで、00年の5月の末だったか、6月の初めだったか、恒例のHUCCのOBラン。
土曜の集合地はJR信越本線黒姫駅。
どうやって黒姫駅まで行こうか、迷ったあげく、北陸本線の夜行急行「きたぐに」で直江津まで行くことにする。
70年代、学生の頃には急行「きたぐに」は大阪ー青森間を走っていたが、今は大阪ー新潟間の運行だ。その頃には札幌ー函館間の急行を座席で眠り、青函連絡船、そして「きたぐに」でもう一晩眠り、播州赤穂まで36時間だった。
直江津には朝6時ころ着く。まっすぐ黒姫駅まで走ると、さすがに酔狼の脚でも早く着きすぎる。
地図を見ると、近くに「油田」?の記号。そういえば千葉や新潟ではごく小規模だが石油が出るなんて昔教わったような。
いつものことではあるが、頭の中に「小さな油田=風力利用の汲み上げポンプ」なんていう絵が浮かぶ。
砂浜の続く海岸線を走ったらすぐに判った。ポンプは当然電動だ。ぽつりぽつりと金網で囲われたポンプ小屋があるだけ。頭の中に浮かんだ絵がガタガタガタと崩れる。
そんなこと、ちょっと考えたらわかるやろ?
適当な所でハンドルの向きを変え、黒姫駅を目指す。
新井から国道18号線を上る。車は少なく二桁国道にしては走りやすかったが、思わぬ勾配のきつい所もあり、少々疲れる。野尻湖では「ナウマン象」の絵が頭に浮かぶが、当然ここにもナウマン象は今はいない。一茶記念館を横目に黒姫駅へ。ここまでで約700mの上り。結構疲れた。
駅前には自転車が数台。すぐに昨日から走っている本隊がやってくる。
門岡さんたちと駅前の食堂で昼食、ビール。
長老組では、あと西川さんとヒロノが参加するそうだが、二人は直接戸隠の宿へ入るそうだ。長野から戸隠へ上がるのかな?かなりきついコースのはずだけどな?
ここから戸隠高原に向かってじわじわ上り。途中から小さな雨が降り出した。
奥社付近の標高が1200m少々。じわじわ上りもきつい。
戸隠奥社の入り口で奥社組と忍者屋敷組、宿直行組に分かれる。当然、奥社へ。
奥社まで伸びる真っすぐな参道は杉林の中、さほど勾配もなく、雨の中にもかかわらず楽しく歩けた。
入り口の鳥居に帰るころには雨が強くなり、宿へ。
風呂の後、楽しい飲み会、いや夕食へ。しかし、西川さんとヒロノが来ない。もう外は暗くなってきたし、雨も相変わらず続いている。
そしたら、電話。「もう走れない。車で迎えに来てくれ~」
聞けば、長野からではなく、白馬方面から嶺方峠、大望峠を厳しい峠越えを二つ。それもおそらく午後にスタートして、雨の中。大望峠あたりから電話をしてきたようだが、暗くなって、さすがに最後の戸隠への上り(約300m)はあきらめたようだ。
そりゃ、そのコースはちょっと無茶でしょ。
そうこうするうち迎えに行ってくれた車が到着。お疲れさん。
さあさあ、急いで風呂入って、早く飲みましょう。
このあと、いつものように西川さんは「ぼやき」っ放し。「ドえらい坂で、上れやせんし、ヒロノは先に行ってしまうし‥‥」
そこへ酔狼が追い打ち。「俺、明日そのコースをこちら側から走る予定なんだけど、走りませんか?残雪のこの季節、嶺方峠はこちらから上がらないと意味ないですよ。それに明日は天気もいいみたいですから。」
当然、西川さんは渋る。いや、酔狼だって同じ状況だったら渋る。同じコースをピストンってのは面白くない。でおね、西川さん‥‥と飲みながら交渉は続く。大望峠の展望もいいですし、嶺方峠のトンネル出たところからの残雪の白馬の眺め最高ですよ。
日曜、朝。酔狼は早く起きて近くの中社(戸隠)まで散歩。ヒロノはかなり遅くまで飲んでいたは ずだが、酔狼にもはや記憶がない。

本隊は今日はそのまま長野へ下る予定だったはずだが、好天に恵まれ、ずいぶん多くの者が大望峠へ上った。こちら側からなら150mほどの上りで展望の開けた峠へ上がれる。
大望峠で本隊と別れ、西川さん、門岡さん、ヒロノ、吉岡くん、酔狼は鬼無里(きなさ)へ下る。鬼の無い里、鬼無里はいかにも旅心をくすぐる名前だ。
下ったところで休憩。
「最近、太りすぎてな、78kgあるんだよ。それで朝食抜いてダイエットしてんだ。」と西川さん。「そんな素人考えのダイエットはダメですよ。ちゃんと医者に相談しなさいよ。」(酔狼)(西川さんは泌尿器科のお医者さん、為念)
鬼無里(680m)から嶺方峠(1100m)の上りはじわじわと、休みなく続くが、好天に恵まれ、今日は西川さんも調子よく上っていく。吉岡君はスイスイ。
嶺方峠はトンネルで峠を越えるのだが、このトンネルがこの季節は抜群の効果を表す。トンネル内を進むと、はじめ出口の小さな穴から外の景色が見え始める。それが、出口に近づくにつれ、出口の穴も大きくなるのは当然だが、それ以上のスピードで見える景色が大きく広がる。そして、残雪の白馬連峰が広がっていく。

酔狼、これで二度目の嶺方峠だが、初めて来たときには思わず声が出た。
トンネル出口からの眺めも最高。お勧めのコース。西川さんもヒロノも満足してくれたと思う。

糸魚川まで走るという吉岡君と峠で別れ、残りの四人は白馬へまっすぐ下らず、下りの途中からJR神城駅へ下る。白馬側の勾配は鬼無里側よりきつく、快適ダウンヒル。こりゃ昨日はきつかったはずだ。
神城駅で自転車をばらし輪行。いつものように門岡さんや酔狼は前後のホイールを外すだけで、ま、5分。一方、西川さんは二十年前のやり方で、ハンドル、サドル、ペダルを外し、泥除け、後輪、最後は前フォークも抜いて、約30分。「待ってらんないから、先行って飯食ってますよ~」といつもながらの失礼な言動。
あとは列車で松本駅へ。解散。門岡さんは今夜上高地で泊まり、明日は徳本峠を目指すそうだ。でも、徳本峠って登山道で、担ぎもあるんじゃないですか?
わずか5年前のことだが、記憶の曖昧なことに愕然。それにも増して、元気だった西川さんが翌01年には発病されて、昨年04年12月には亡くなられたことが残念でならない。
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