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酔狼通信 7
87.6.7
 信州、富士、琵琶湖、天竜と続いたHUCCのOBランも今年で五年目、年々参加者の数は減っていく。ま、30にもなるとそれぞれいろんな事情があるわけで‥‥。そこで今年は幹事のタケルがずいぶん下の連中にも頑張って声をかけてくれた。 
 でもそのタケルが待望の二人目の女の子が生まれて参加できなくなってしまった。そこで酔狼が当日のことは引き継いだのだが、なにしろ若い連中の顔も名前も初めてである。前日になってDr西川とクマ君の二人が参加できなくなった。13名。
 6月6日。大阪環状線鶴橋から近鉄で東へ向かう。タケルからの伝言は「近鉄室生口大野に午後1時集合。出発は2時。」集合時間には少し早いので一駅手前の榛原で降りる。電車の中では気がつかなかったが外は暑い。めちゃくちゃ。自転車を組み走り始める(1時間ほど汗かいて行くか)。   それにしても暑い。アスファルトからの照り返しがムッとしている。これでは自転車も風になれない。国道369を北へ。香酔峠。標高差200mの峠がきつい。今度は南へ向かい室生口大野へ。途中、向淵のスズラン群落へ立ち寄る。花の季節は五月下旬が精一杯、花はひとつも無かった。室生口大野の駅には1時頃到着。若いのが荷三人いる。 
 「こんちわ~、上に広野さんいますよ。」
 いたいた。「よぉ~」「おぉ」相変わらずである、お互いに。哲が急に来れなくなったそうだ。久しぶりに会えると思って楽しみにしていたのに仕事が彼を放さない。
 列車が着くたびに自転車かかえて誰かが降りてくる。老師がやってくる。門岡氏がやってくる。仙台からほんとによく来るわ!感謝。
  定刻2時出発。暑い。大野寺の石仏を横目に室生川をさかのぼる。室生寺まではゆっくりと20分。老師と門岡氏、ヒロノ、酔狼の四人は早速門前の茶店に入って、門岡氏「とりあえずビール五本!」若い連中はあきれ顔で寺へ向かう。あとで行くからと四人は乾杯。
 ところが若い連中はすぐに引き返してきた。「入山料がいるんですよ。」「当然だろうが!」喉が潤ったところで門岡氏、ヒロノ、酔狼の三人は寺へ。女人高野室生寺は山上まで続くのだが五重塔で引き返す。山上から降りてきた一団が塔の下で写真を撮っていたのでシャッターを押してあげる。
 (酔狼)「もう一枚撮りますよ。えぇっと、これ自動巻ですよね?」
 「左巻きじゃないわよ。自動巻だわよ。」と、おばあさんの声。一同大爆笑。声の主は尼さんで一団のリーダーである。
 その後、下の金堂で仲間の人たちがちょっと遅いと「早くしなさいよ。もう、飛び降りちゃいなさいよ。」尼さんの元気な声が飛ぶ。
 (酔)「おばあさん、歳いくつですか?」「80よ。」「いやぁ~、お元気ですね。80には見えないですよ。」「(はずんだ声で)そぅお、いくつに見える?」「んん~、79にしか見えないわ。」大爆笑。やったぁ、一本取り返した。
 龍穴神社。門岡氏の本式の柏手。目を丸くする若い衆。
 杉林の中をじわじわと上っていく。さすがに若い衆は速い。門岡氏がそれを引っ張っていく。国道との合流点で休憩。老師はバッグからポカリスェットを取り出して、うまそうに飲んでいる。こういうことはしっかりしてるわ、この人は。峠の上までもう一頑張り。
 峠の上で酔狼、「今ならビール一本千円で買うぞ。」「ぬるくなったポカリスェットなら500円で売るぞ。」と、またまたバッグから取り出して飲む老師。
 軽快ダウンヒル。酒屋で缶ビール。(宿までの上り坂でビールは抜けるよな)ヒロノは「今日、二回目の生き返り。フゥ~。何度でも生き返るな。」酒の買い出しを済ませて宿へ。この坂がめちゃくちゃきつかった。
 風呂入ってビール。痛飲。最後の坂を頑張って上ったおかげで「奥香落高原ロッジ」の名のとおり、谷の向こうの山並みが目の前に広がっていい気分。外はまだ明るい。ツッタさんからの差し入れの「越乃寒梅」ごちそうさま。酒をもう一本空けて山並みが見えなくなったので部屋へ入る。タケルからもらった「カミュ・ナポレオン」残念ながらもう酒の味はわからなくなっている。あ~ぁ、もったいない。酔いつぶれた順にぐっすり眠る。夜中、カァンと音をさせて老師がポカリを飲む。朝尋ねると「酒飲むと喉乾くだろ。」だと。本当に用意のいい人だ。
  7日。快晴。今日も暑くなりそうだ。
 出発。タケルが何度も下見をして薦めてくれたコースは谷の向こうの山の上。飲んで皆で決めたのは、(老師が以前走ったって。それなら楽勝コースだ。)と、宿への道をそのまま上がって赤目四十八滝。急坂を上ると、少しの間杉林の中を快適な道が続く。再び急坂を頑張って峠。爽快ダウンヒル。赤目四十八滝の入り口から遊歩道を下る。沢伝いに細い道を進む。残念ながらほとんど乗っては走れない。自転車を押す。肩に担ぐ。厳窟滝。琵琶滝。陰陽滝。××滝。○○滝。途中からハイカーが多くなり、じゃまな自転車かかえた12人の異端者はすれ違うこともままならず、すっかり楽しく疲れてしまう。キリマンジャロにでも登れそうな重装備の自転車担いだ野田君、ご苦労様。目の前で切り株にペダルを引っかけて転倒した飯塚君、いいもの見せてくれてありがとう。
 腹減って腹減って、やっと下までたどり着いた。ずっと沢伝いにいたから気づかなかったが舗装道路に出てくると暑い。昼食。ビール。またまた生き返る。
 近鉄赤目駅まではダウンヒル。駅前で散会。東へ帰る者、西へ帰る者。門岡氏、ヒロノ、酔狼は国道へ。名張の町で横浜へ帰るヒロノと別れる。「じゃあな。」「じゃあな。」
 門岡氏と酔狼は伊賀上野へ。白鳳城。伊賀一宮を目指す門岡氏とここで別れる。「またどこかで。」
 ずっと訪ねてみたかった伊賀上野も緑の山の中から出てくると、さほど魅力を感じない。俳聖芭蕉も、忍者屋敷も、鍵屋の辻の決闘も色あせてしまう。せっかく足を伸ばしたけれど早々に引き上げる。飲むから走るのが楽しいのか、走ったから飲むのが嬉しいのか?今度も答えは出なかった。だからまた走ってみよう。
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