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酔狼通信 287-2
22. 5
 3日。
 前橋城(厩橋城)はスルーして西へ。
​ 箕輪城。
 ここは典型的な土の城。深い空堀が見事。本丸の土塁もよく残っている。昨日から続く快晴に風が爽やか。今日はキツイ上りも無い脚休めのコースどり。ま、小さなアップダウンはあるけどね。
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左:本丸土塁                     右:本丸の深い空堀  
 高崎の市街地をかすめるコースが予定やったけど、やめて田舎道へ。
 甘楽町の「雄川堰」水の流れが気持ちいい。木陰は涼やか。
 ここは小幡城の城下町でもある。
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 水の流れと城下を楽しみ今回のツーリングのメインテーマのひとつ富岡製糸場へ。世界遺産の指定されるずっと以前から興味があったが、なかなか訪れる機会が作れなかった。世界遺産指定直後の混雑も8年経てばなくなったかも。

 

 五月連休中なので、それなりに観光客は多いが、ま、自分もそのうちの一人なので、これくらいは、という感じ。

 

 蚕の繭玉から生糸を作る作業を実演されていたが、この作業を機械化するっていうのも、またすごい事やなと先人の知恵と工夫に頭が下がる。
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左:生糸の糸繰り作業実演
​右:機械化された糸繰り機
 昼食。富岡製糸場近くの食べ物屋さんを敬遠して町中でと思ったが、良さげな店が見つからず、その代わりお寺の前の木陰のベンチを見つけたのでコンビニ弁当と缶ビールで昼食、大休止。今回の旅、初めての昼からビール。
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 安中への小さな峠を越えれば今日の目的地に着いたも同然なので、ゆっくりする。

 

 大休止の後、五月の強い陽射しのもと走り出す。小さな坂を越え、安中市内へ。旧中山道。
 安中藩郡奉行宅跡、武家長屋、そして新島襄旧宅。ここもそうやなぁ、新島襄、名前だけは知っている。
 旧中山道の緩い上りを走り、宿へ。

 

 汗を流し、ビールを飲んで、デジタルカメラのバッテリーを充電しようと思ったら、ケーブルを入れた袋が見当たらない。

???

 ???ん?昨日の宿に忘れた?いや、ちゃんと部屋に忘れ物が無いか確認したよな。ん?
 落とした?そういえば、途中、サドルバックを閉めるバックルが外れていたときがあったな?

???

 ま、いずれにしても今どうすることもできない。あと二日、バッテリーが持つかな?いや、持たんやろなぁ。しょうがないなぁ。ま、写真撮りたいという気はあるけど、写真撮ることで、「見た」気になってるところがあるから、電池が切れたら切れたで、ま、えぇか。と、いつものえぇかげんな酔狼。

 

 と、早い時間の食事とビールで、お休み。
 4日。
 いい天気が続く。
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妙義山
 宿を出て、国道18号を上っていく。旧中山道が走れれば、そちらへ。松井田宿から上っていくと横川駅。休憩。
 横川駅は、かつて国鉄信越本線の群馬長野県境の急坂を登るアプト式路線や「峠の釜めし」などで有名な駅やけど、北陸新幹線の長野までの開通で、横川―軽井沢間は廃止され、群馬県側の終着駅になっている。

 

 ちなみに、ネットで検索してみると、その後、北陸新幹線の金沢延伸により長野・新潟県側の信越本線はズタズタに分割されているようや。

 

 休憩を終え走り出そうとしたら、お洒落なサイクリストが現れた。
 どちらからともなく声をかけ、「これから上るんですか?」「降りてこられたんですね」と話をするうち同い年だということが判り、ますます話が弾む。
 廃業してしまった東京神田「アルプス」のクラブや「山岳サイクリング研究会」などの運営に参画されているとか。
 「お気をつけて」とハンドルを逆方向に。

 

 横川駅を後に国道18号を上る。すぐに碓氷バイパスと別れ、旧国道を軽いギアでゆっくりゆっくり上っていく。
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中山道上州側の最後の宿場、坂本宿
 中山道の峠の前の最後の宿場坂本宿を過ぎ、じわじわじわじわ。少し上ると信越本線の線路跡に残る煉瓦造りの「めがね橋」にたどり着く。

 

 見上げる橋の上に登れるそうやがツーリング五日目の酔狼にその元気は残っていない。残念やけどね、それが今の体力。
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 今朝出発した宿の標高が260mくらい、めがね橋がほぼ600m、目指す碓氷峠の標高が956m。ほぼ半分来たことになる。余裕とまでは言わないが、峠をなんとか越えられそう。

 

 森の中、右に左にコーナーを抜け、標高を稼いでいく。木陰が続き心地いい。
 しかし、酔狼が思っているほどには進んでなく、「三分の二くらい上ったかな」と思った後に道路わきに「800m」の標識が現れ、ガッカリする。そして「700m」の標識は無かったから「900m」の標識も無いのかなと思ったかなり後に「900m」の標識が現れる。
 ただ、「800m」の標識の後は少し勾配が緩くなったので、少し楽ではあったけどね。気持ちが~

 

 ま、正直、よれよれで碓氷峠にたどり着く。
 しかし峠は展望も無く、達成感が無い。予定ではこのまま旧国道18号をそのまま軽井沢に下っていくつもりやったけど。峠の上から旧中山道の碓氷峠(ほぼ1200m)に向かう道が伸びている。
 どうする?
 
 えいっ、っとハンドルを旧碓氷峠に続く道に向ける。
 幸い、勾配は少しきつくなったくらいで、ま、なんとかなるくらい。おまけに前にカップルが上っていく。青年は余裕で上っているが、女の子はなんとかかんとか。
 はい、酔狼、「なんとかかんとか」なら同レベルなので、いい目標にさせてもらいました。ありがとね~

 

 旧碓氷峠に向かう道路の脇は別荘地になっていて、連休を別荘で過ごす方々がときおり散歩をされている。別荘の駐車場には「ベンツでなければ車じゃない」というくらいベンツが停まっている。

 

 なんとかかんとか旧碓氷峠にたどり着く。でも、ここも峠からの展望はない。すぐ脇に見晴台がある。鞭打って歩こう。
 見晴台からは群馬県側の山並みが広く見える。これでも充分満足やったが、奥の方を見るとそこからも展望が望める様子。

 

 奥の見晴台まで行ってると、ここからは長野県側の展望が広がり、雪が残った浅間山が見える。山歩きの方に尋ねると条件が良ければ遠く北アルプスも見えるとか。さっきの所で満足したら失敗やったな。
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見晴台から浅間山を望む
 旧碓氷峠を後に、軽井沢に向かって森の中を下っていく。心地いい。えぇなぁ。
 急ぐわけではないので、ゆっくりゆっくり下りを楽しむ。
 
 また別荘がちらほら現れ軽井沢に近づいたのが判る。人多いんやろな、と思ってたけど、実際「軽井沢銀座」に降りたときにはビックリした。なんや、この人込みは!!

 

 いや、確かにTVのニュースで軽井沢の賑わいを見たことはあるし、ある程度予想はしていた。でも、それを遥かに超える観光客。碓氷峠から旧碓氷峠に向かう別荘地の閑静とした佇まいとはまったく別物。
 人込みの中、100m?200mほど進み左手に分かれる道が現れたので、何も考えずそちらに逃げ込む。この道を少し進むと、大きな道路に出て、ここならなんとか走れそう。自分が今どこにいるのかまったく判らんけど、とりあえず下っていけば国道に出るやろ。

 

 しばらくして国道に出て、小諸上田方面にハンドルを向ける。
 軽井沢で土産を買って家に送ろうと思っていたけど土産店を覗く気にもならない。「逃げるように」ではなく、正に軽井沢から逃げ出した。

 

 国道は酔狼同様軽井沢から出る方向は車が動いているが、軽井沢に向かう車線は大渋滞。ほとんど動いていない。えっ~、そうまでして軽井沢へ行きたいか?

 

 軽井沢から逃げだし、ひたすら走る。追分のあたりで、良さげな蕎麦屋があったけど、ここもまだ軽井沢の空気に支配されているようでパスする。

 

 その先で、ようやく国道18号から別れ、旧中山道へ進む。
 ずいぶん、下る。下る、下る。軽井沢の空気が無くなったころ御代田町で、中山道から離れる(鉄道施設の都合で分断されたと予想)。
 
 丁字路で立ち止まり「左やろなぁ」と思いつつ、同じように丁字路に差し掛かった先行する綺麗なおねぇさん二人の横で「ここはどこ?私は誰?」とつぶやいてみたら、おねぇさん二人は優しく反応してくれ、「どこへ行きます?佐久なら、この道下って駅の先を左に・・・・」と丁寧に教えてくれる(そう、再びクレヨンしんちゃんモード)。ありがとね。

 

 教わったとおり駅の先を左に曲がった先に「蕎麦屋」発見。迷わず入り、ざる蕎麦にビール。下野新聞、上毛新聞と渡り歩いてきた地方紙は長野に入ると「信濃毎日新聞」。一面に「諏訪の御柱」。旅は、こうでなければ!
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リンゴは花盛り  
佐久の町中を抜け中込。旧中込学校。
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たびたび言うことやが、「学校は大嫌いやったけど、なぜかこうした古い校舎は大好き」
 今夜はここ中込で泊るんやが、一足伸ばして、龍岡城を目指す。
 前方に八ヶ岳の白い山並み。
 
 龍岡城は函館五稜郭同様、星型要塞の形をしている。現在は小学校として使用されているが、連休中のためか校内(城内)へも立ち入ることができた。

 すぐ傍の山の中腹まで登れば、五角形の城全体が見られるそうだが、めがね橋同様、ツーリング五日目の酔狼にその元気はない。
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龍岡城の星形の先端、写真では判りづらい
 デジタルカメラのバッテリーもとうとう力尽きた。

 

 中込まで引き返し、宿へ。

 

 

 
 5日。
 いよいよ最終日。無事ここまで走れたという思いと「あ~、終わってしまう」という寂しさが入り混じる。

 

 中込を後に佐久から小諸を目指す県道に入る。前方に熱気球が沢山浮かんでいる。ダメもとでカメラの電源を入れてみる。液晶画面は現れたがシャッターボタンを押すと画面に「電池残量がありません」。残念。目に焼き付けておこう。

 

 今日のコースは千曲川沿いにずっと下るコースなんやが、小諸までは流れ込む支流の度に一旦下り、再度河岸段丘の坂を上るのでちょっときつい。

 

 小諸。四十年ほど前にACCの仲間たちと走り泊ったことがあるが(松本、軽井沢、佐久から八ヶ岳へ)、その頃には城跡にはまったくといっていいほど興味が無かったので、松本城も小諸城も訪ねていない。小諸城は城門の「懐古園」という看板を見ただけと記憶している。

 

 といういわけで小諸城。見事な城やった。威圧するような二の丸あたりの石垣の石の大きさ。本丸の後ろは千曲川の高い崖で守られている。正に地形を生かした唯一無二の城(どの城もそうやけどね、だから城巡りは面白い)。

 

 ここからは帰りの列車に乗り込む篠ノ井まで消化コース。

 とはいえ、国道と並行する北国街道に入ると気分は上がる。閑静なたたずまいの海野宿。えぇなぁ。江戸時代のたたずまいが多く残っているんやから、初めて訪れた四十年前と変わらぬ印象。のんびり時間が流れていく。ひと休み。
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海野宿 12年撮影 
上田。当然上田城。ここも千曲川の河岸段丘の先端に造られた城。深い堀が印象的。
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河岸段丘の崖下から見上げた上田0城(12年撮影)
 上田の先、坂城から対岸に行くとサイクリングロードを発見(調べておけよ、といういつものパターン)。楽しく走る。

 

 稲荷山の古い町並みはここも重伝建。
 
 早々に篠ノ井に到着。自転車をばらし輪行袋に入れ、乾いた服に着替え昼食、ビールがうまいっ!予約の列車まで1時間余り時間をつぶし、特急「しなの」に乗り込む。10年ぶりの信州路。以前のような峠越えはもう難しいかなと思いつつ、うつらうつらしながら名古屋で新幹線に乗り換え帰宅。

 

 距離は随分抑えたし(6日でほぼ400km)、山城(唐沢山城、新田金山城)へのアクセス以外には急坂もなく、峠越えと言えるのは碓氷峠だけの緩いコースやったけど、あちこち見て回って毎日たっぷり楽しめた。雨も半日だけ、感謝、感謝、何に感謝かわからんけど、感謝、感謝の六日間やった。

 

 もうしばらく、こういうツーリングが楽しめる脚力、気力を維持したい。さあ、次はどこへ行こうか。5
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