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酔狼通信 288-2
22. 8
 「22年 夏のツーリングの巻」 後編

 9日。
 早朝、宿を出る。
 県道17号を走ると、すぐに河岸段丘のキツイ坂。河岸段丘の崖を上りきると、後は段丘上を富士川沿い同様小さなアップダウンを繰り返しながら高度を稼いでいく。
 小さな下りは仕方がないが、少し大きな下りがくると、思わず「下るなよ~」とボヤいてしまう。
 
 5kmほど走った丘の上、左手の山に新府城跡。こちらは信玄の後、勝頼の時代に築かれたそうや。山城歩き。土塁、馬出し、本丸はとても広い。
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 数km走ったところに「オオムラサキセンター」開館時間は8時半。5分程早いがダメ元で受付へ。「もうしばらく待ってください」融通の利かん奴やな、と「ダメ元」のはずなのにそう思ってしまう。ま、ええわ。先に園内を散策しよう。

 15分余り園内を歩くが他の蝶やトンボの姿は見えるけど、オオムラサキらしきものは見当たらない。

 改めて、オオムラサキセンターへ。あ、酔狼、国蝶とされているオオムラサキを見たことは無い。館内の展示もそこそこに奥にある網で覆われた「生態観察施設」へ。

 生態観察施設内はオオムラサキが乱舞しているかと思ったが、それほどでもない。葉陰などで休んでいるのかもしれない。なかなか見つからない。それでも何匹か見つけた。しかし、青紫色の美しいオスには出会えなかった。残念。
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綺麗な青紫のオスを見たかった
 さらにアップダウンを繰り返し、小淵沢近くの「大滝神社湧水」。このあたりには、あちらこちらに八ヶ岳の伏流水が湧き出している所があるようで、ここはそのうちの一つ。
 冷たい水で顔や手を洗い、頭からかぶる。気持ちいい~
 しばらく休憩し、また暑い道路に出ていく。

 小淵沢駅近くのコンビニをやり過ごし、またすぐにあるやろうと思ったが、そこからバッタリ店が無くなった。そうなると無性に腹が減って来る。

 交差点でロードバイクで軽やかに坂を上って来る地元の女子中?高生とバッタリ出会い、少し話し込む。
 「どこまで行くんですか?」「暑いから、午後はほとんど走らんから、縄文遺跡へ行って、今日は茅野まで」「井戸尻遺跡なら、すぐ先を下ればすぐですよ」「いや、茅野にある尖石遺跡へ行こうと思っている」「それならこの道真っ直ぐですね」

 お姉ちゃん、ガンガン走れそうやった。元気でね。気を付けてね。
 その先、道路脇に「蕎麦 おっこと亭 2.5km」の看板。ん、蕎麦にしよう。休業日やったらどうしよう?などと考えながら乙事(おっこと)集落へ。ところがそこに右手上り坂の方向を指示する「おっこと亭 1.5km」の看板。わずか1.5kmやけどね、休業日のことが頭をよぎり、脚もヘロヘロ。県道を直進する。

 次の集落で食料品店を見つけ、菓子パン二つで腹をつなぐことにする。休憩。生き返る。でも暑い。標高は1000mを越えて走っているときはマシやけど、立ち止まると暑い。爽やかな高原というわけにはいかない。

 1100mを越えたあたりで、酔狼の予定のルートのピーク。そこを過ぎると緩やかに道路は下りになる。今度こそ「爽やかな高原道路」。陽射しは強いが気持ちいい。脚も軽やか。

 茅野市に入り、更に少し下り、今回のメインテーマの一つ「尖石縄文考古館」を目指す。ここの標高差100m余りの上り返しがきつかった。ほぼほぼ脚は売り切れ。よれよれで考古館にたどり着く。

 昨日の山梨県では公共施設の休館日が「火曜日」で、茅野市のある長野県も「火曜日」やったらどうしようと心配していた。日程は、この日が酔狼の頭の中での「月曜日=休館日」にならないように組んだので、ね。(ま、調べとけっていう話やけどね)

 幸い、考古館は開館中で、周りの森も相まって外も気持ちいい。ワクワク入館する。

 館内には数多くの縄文土器、石器が展示されているが、何といっても国宝指定されている土偶二つ、「縄文のビーナス」と「仮面の女神」。
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左:縄文のビーナス                      右:仮面に女神
館内は国宝二点を含め撮影可だが、不思議なことに他の地方のも含めた国宝土偶の複製は撮影禁止だった。
 いやぁ、楽しいなぁ。4000年も5000年も前の人がこんな物を創ったんやもんなぁ。今、酔狼に作れと言われても、よう作らん、創れない。

 館内をゆっくり見て回り、再度二つの土偶の展示室へ。いやぁ、凄いなぁ。

 さぁ、後は茅野の町まで下るだけ。
 市街地(標高800mくらい)まで降りてくると、更に暑い。先ほどまでいた標高1000m付近がいかに涼しかったかがよく判る。

 時間もまだ早いし、なけなしの体力、気力を振り絞り明日行く予定の「諏訪大社上社本宮」まで往復10km脚を伸ばす。

 七年目ごとに行われる「諏訪の御柱(おんばしら)」が寅年の今年行われた。急な坂を御柱となる大木に人々が乗ったまま落ちていく「木落し」を一度は見てみたいと思っていたが、まだ実現していない。次の「御柱祭」にその気が起きるかどうか?
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左手に立っているのが上社本宮の「一の御柱」
 諏訪大社上社本宮を後に市街地の宿に。
 汗を流し、洗濯、ビールはいつものパターン。距離は短いが今日は特に盛りだくさんのコースやった。夕食、ビールで撃沈。


 10日。
 ツーリングも五日目となると疲れも溜まる。それでも早朝車の少ない道路に走り出す。
 諏訪市に入り高島城。かつては諏訪湖畔に面した水城。今は湖畔から500mほど離れている。
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諏訪湖畔に出て湖畔のサイクリングロードを走る。
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片倉館
岡谷市に入り旧中山道を走る。
 もう40年も前になるが、岡谷の中山道、塩尻峠を下った街道沿いに友人の実家があり、留守宅に泊めてもらったことがある。その当時は、そういうことが平気というか、当たり前のことだと思っていた。(知人を訪ねる、というか、頼る)ことが当たり前のことだと思っていた。
 これは別の意味で、青年海外協力隊で派遣された任地、アフリカ・マラウイでの隊員生活で、他所の町を訪れて、そこに他の隊員がいれば、当たり前のように訪ねて行き、泊めてもらうなど頼っていた。酔狼は未だにその感覚が残っている。

 そのとき頼って行った友人は今井君といい、地区の地名が「今井」小学校が「今井小学校」で半数が今井姓だったとか。家を見つけるのに苦労した思い出。
 今回も、それらしき家を探しながら走ったが判らなかった。そりゃそうやな。友人がそこに住んでいるわけでもなく、40年も時間が経てば変わらない方がおかしい。

 市街地を抜け、旧中山道の激坂を上る。近所のおじさんに「頑張ってね」と声をかけてもらった五秒後には自転車を降り押し始めた。酔狼の靴、歩けるサイクリングシューズではあるが、激坂を押して上がるのは辛い。辛い。なんでこんなアホなことやっとんやろ?
 車の多い国道20号を走りたくないがためなんやが、アホや。アホや。楽しくもなんともないやろ。

 40分ほど自転車を押し、中山道旧塩尻峠にたどり着く。展望台からは大きく諏訪湖が見える。天気が良ければ富士山が見えるようや。富士山ってすごいなぁ。
旧中山道塩尻峠
 塩尻峠を越えれば、大げさやが今日の予定は終わったようなもの(実際はそうでもないが、気分的にはそんな感じ)。ゆっくり休憩し、稜線沿いの道路を国道の塩尻峠に。ここは少し下り。その先の稜線は自然歩道になっている様子。時間があるので歩いてみたけど、特に面白くも無く、15分ほど歩いて引き返す。

 国道はやはり車が多いので再度旧塩尻峠に上がる。そして更にそこから東山に向かって伸びる林道を上ってみることにする。しばらく上ると舗装が切れ、地道に変わる。
 地道を少し自転車を押して上るが、浮石が多く、この道は下っても楽しくないので峠に引き返す。

 峠から旧中山道の急坂をゆっくり下る。途中に一里塚。
 国道に合流すると、車の通行量が多い。少し下って、みどり湖方面に下る脇道へ。しかし、みどり湖はさほどいい感じでもなく。そのままスルーして塩尻の市街へ下る。途中で中山道に入り塩尻宿。

 山沿いの県道63号に逃げ、松本を目指す。途中、「重要文化財 牛伏階段工」の標識に誘われ、急坂を上るが、脚は残っていないので途中から自転車を押して上がる。なんか、押してばっかりやなぁ。

 で、結局、牛伏寺の入口付近で諦め松本市街へ下ることにする。なんか、今日は空回りばっかりやな。

 今日の昼は蕎麦と昨日から決めていたので松本の町中を良さそうな蕎麦屋を探しながら松本城を目指す。結局、松本城のすぐ前の蕎麦屋へ入る。

 「天ざる」とビール。今回のツーリング、注文した瓶ビールは全て大瓶やったが、この日は中瓶。んん~、今日は大瓶が欲しかった。天ぷらを肴にビールを飲み、蕎麦をすする。

 松本城登城は二度目、    は盆休みの真っ盛りで登城待ち「60分」、天守内部も大混雑大渋滞でまともに見学できなかった。人の頭の記憶しかない。

 券売所に「登城待ち時間 60分」、その下に「緊急搬送中」の掲示。そして係員が出てきて正にその「60分」を他の数字に変えようとしている。
 幸い、待ち時間は「30分」になり「緊急搬送中」の掲示も取り除かれた。

 本丸広場で20分余り待って無事登城。新型コロナウイルス蔓延のせいで、人数制限をして登城しているので、天守内部も、ゆっくり見学できる。

 上層階に上がると、窓から吹き込む風が気持ちいい。満足。
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 松本城のすぐ北にある「旧開智学校校舎」これも国宝。前回、理由は忘れたが見学できなかった。今回は「耐震工事中」でまたも見学できず。前回同様、鉄の門扉越しに写真を撮って諦める。
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また宿題が残ってしまった
 今日の予定は全て終了。連日のように早々に宿に入り、汗を流し、洗濯、ビール。
 夕食、ビール、缶酎ハイで撃沈。


 11日。
 最終日。最初のプランでは高齢者18きっぷで延々帰るつもりでいたけど、出発間際に欲が出て、中山道の奈良井宿まで走ることにした。昨日通り過ぎた塩尻目指して走り出す。

 しかし、向かい風が強い。奈良井駅発840に間に合うようにと6時前に宿を出たが、厳しそう。次の列車は1126発。松本から西街道を走り、中山道に合流。洗馬宿で休憩。けっこう時間がかかっている。ま、しょうがない。風のせいにしとこ。

 国道19号を走り、旧道があればそちらに逃げ込む。幸い、朝早いので国道もそれほど交通量は多くない。それでものんびり走れる旧道へ。

 本山宿、贄川宿を過ぎ、奈良井の手前、木曽平沢の町は軒並み漆器、漆工芸の店。

 奈良井駅に着いたのは810。もちろん自転車を袋に入れる時間は十分あるが、それでは何しに奈良井に来たのか意味が無い。

 三度目の奈良井宿。古い町並みをぶらり自転車で流す。
     来たのは40年余り前、ACCの仲間たちと高山から野麦峠を越えてきた。その当時は今のような賑わいは無く、静かな、鄙びた宿場町だった。知らずに予約した宿は江戸時代から続く旅籠で、檜風呂、漆工芸の座敷机、漆細工の盆に載った数々の料理。部屋は当然のように隣と襖で仕切られ、TVが無かった。
     は30年ほど前になるかな。HUCCの仲間たちと伊那の山室鉱泉から権兵衛峠を越えてきた。このころには民宿も増え土産物店もできていた。その時は民宿に泊まった。大きな曲がった梁と山菜の天ぷらが印象的。
 今回の感想は、町並みは整備され、相変わらず見事。でも欲を言えば綺麗になり過ぎ、それでも酔狼にとっては重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)の中でも一級の評価。訪れたことの無い方にはお勧めです。
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下は40数年前のもの 左は上下とも旅籠「ゑちご屋」
 ぶらり街を流して駅まで戻ると8時の列車の発車間際。さて、それにしても次の列車まで2時間半余り、ゆっくり自転車をばらしても2時間は待たなきゃならない。

 ということで欲が出る。初回も二度目も走った旧国道を走り、旧中山道の鳥居峠を越えよう。ちょうど、自販機に来た地元の同年輩の方に道路状況を尋ねると「その道は知らない」と言う。ま、普通は国道の長いトンネルを抜けるから知らんわなぁ。

 「ダメ元で行ってみます。ダメなら引き返しますわ」「気を付けてね」

 旧国道を少し上ったら畑仕事の人が「峠越えかい?」と声をかけてくれた。「通れますかね?」「自転車なら通れるよ」「じゃ、行ってみます」

 舗装の切れるところに「通行止め」の看板があったが、行ける所まで行ってみよう。
 道路は勾配も緩く、路面も締まっていて酔狼のヨレヨレの脚でも走っていける。

 ゆっくり、のんびり樹間の地道を走る。「工事中」の看板に「休工中」「通行可」の掲示。良かった。越えられそう。40分くらい、じわじわ走り鳥居峠のすぐ手前で旧中山道と合流。峠の先で中山道とまた別れる。

 下りは、またゆっくりゆっくり。ずいぶん下ったところで旧中山道の石畳と交差する。
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 下って藪原宿は「お六櫛」の産地。

 駅で自転車をばらし輪行袋に収める。列車まで1時間半ほどある。時間的には木曽福島あたりまで走れるやろけど、以前走ったことがあるが、さほど楽しかった記憶が無いので、ここ藪原で乗車することにする。

 腹減ったなぁ。駅からずいぶん上の国道に「道の駅」が見えるが、そこまで上がるのも大儀。通って来た町中に食料品店があったような?時間あるから、ぶらり歩こう。と歩きだしたら、すぐそこに軽トラの移動販売車。ラッキー。
 ちらし寿司買って、麦茶で昼食。って、10時半、めちゃくちゃ早い昼食やん。ほんまは缶ビールが欲しかったけど、あいにく移動販売車には無かった。残念。

 藪原発1132、ってことは列車なら奈良井から6分か。酔狼の自転車での峠越えは1時間余りかかった。贅沢な時間の使い方やな。

 中津川、名古屋、大垣、米原で乗り継ぎ播州赤穂まで長~い長~い高齢者18きっぷの旅。
 さ、次のツーリングのプランは? 
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