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酔狼通信 293-3
23.07
 「酔狼のセンチメンタルジャーニー part3 後篇」
 6日。
 利尻鴛泊港を出港したフェリーは1005稚内港着。老師は名寄行きの普通列車に間に合うからと急ぎ稚内駅に向かう。
 タケル、酔狼はゆっくり駅へ。自転車を輪行袋に収めた老師を見送り、雨のため宗谷岬往復を諦めたタケルと酔狼は13時の特急まで時間を過ごす。酔狼は2日に行かなかった旧瀬戸邸(底引漁業で栄えた)へ。タケルは先日酔狼が行った「樺太記念館」へ。

 

 小雨も降っているので早々に駅に戻り、輪行を終え、構内にある食堂で昼食、乾杯。コンビニで車内で飲むビールとつまみを買い込み特急に乗り込む。

 

 1649旭川着。タケルは特急を乗り継ぎ札幌の自宅へ。酔狼は旭川に泊まる。
 旭川はたぶん46年前の夏、駅で寝袋で寝て以来。というか寝たハズ。

今日は移動だけやったけど疲れたなぁ。

 

 

 7日。
 早朝、宿を出て自転車を組み立てる。
 天気予報は曇り一時雨。薄曇りの町へ走り出す。国道を南下し富良野を目指す。

 

 富良野と言えばラベンダー。そう、今日の目的は富良野のラベンダー畑。
 似合わんなぁ。そう、でもこれにはちょっとした因縁(?)が。
 77年夏、HUCCの夏のツアー(長期自転車ツーリング、HUCCではツアーと呼んだ)、集合地は道北稚内。
 当時、三年目の酔狼(当時のあだ名は、ただのオオカミ)は一年目のクラブ員二人を連れ、札幌から富良野まで夜行の鈍行列車「からまつ」に乗った。
 富良野駅には夜中の3時頃に着いたはず。そして富良野駅では30分ほど停車するので(三人おったら、誰か目を覚ますやろ)というオオカミ先輩の言で札幌駅を発ってすぐに眠った(少なくとも私はね)。
 夜中、目を覚ますとどこかの駅に停車している。発車する気配はない。すでに起きていた目の前の一年目Bに「今、どこ?」と尋ねると、「なんかさっきから、ずいぶん長いあいだ停まってるんですよね」との返事。「富良野で30分停車するって言ったやろ」と慌ててホームに降りてみると、「富良野」の駅名表示。列車に飛び乗り、もう一人の一年目Hをたたき起こし大慌てで列車を降りた。
 ぎりぎりセーフで富良野駅で無事下車し、夜中の3時でまだまだ暗いので、明るくなるまで駅舎に寝袋を広げて、また寝た。

 

 道北稚内に向かうのに、わざわざ富良野に向かったのは、私が前年76年の国鉄(まだ民営分割化の前)のカレンダーに採用された「富良野のラベンダー畑」の写真を見て、(綺麗やなぁ、行きたいなぁ)と思い、一年目二人に「俺に付いてこい」と引っ張って行った。という訳。

 

 明るくなって、自転車を組み、走り始める。今と違いネット環境も無く、事前に調べることもせず、(富良野に行けばラベンダー畑があちこちにあって、簡単に見つけられるハズ)今も昔も変わらぬいいかげんな計画。

 

 旭川方面に向かい国道を北上する。ラベンダー畑は無い。そこで国道を外れ、西の裏道へ、東の裏道へ。思いつくまま北へは向かいつつ、うろうろした。

 

 結局、ラベンダー畑を見ることはできず、一年目部員の二人はアホな先輩に言われるまま西に東に、ただただ疲れる走りを強いられた、という私にとっては恥ずかしくも、苦々しい思い出がある。
 裏道を走っている時に、赤とんぼがいっぱいいて、走っている自転車のハンドルやフロントバッグに止まっていたのを強烈に覚えている。そして、どの辺りだったのかわからないが、今は「パッチワークの丘」と呼ばれる畑ごとに違う様々な色合いの畑の景色だけが記憶にある。

 

 そして、これは三十年後くらいに知ったことなんやが、当時、それ以前にはあちこちでオイル採取用に造られていたラベンダー畑は富良野には、たった一枚しか残っていなかったという事だった。
それが、冨田さんの畑で、今のファーム冨田。国鉄のカレンダーをきっかけに、写真家やアマチュアカメラマン、そして徐々に観光客が富良野を訪れるようになり(きっとTVドラマ「北の国から」の影響も大きいと思う)、ラベンダー畑は増え、今の「富良野と言えばラベンダー」というイメージが定着したと思われる。
 たいへん長くなったが、酔狼にとっては、富良野は「もう一度走りたいリスト」のかなり上位にランクする所。

 というわけで柄にもなく、ラベンダー畑を目指し、まずは美瑛のパッチワークの丘へ。残念ながら天気は優れず、いかにもパッチワークというような風景は見られなかったが、ま、それも良し。一時は雨具を着ようかなという具合だったが、徐々に天気は回復してくれた。
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 上富良野町、地図上に「日の出公園 ラベンダー畑」そちらに目を凝らすと丘の上にラベンダー畑らしきものが遠く見える。
 急坂を上り、日の出公園。ラベンダー畑。んん、でも、なんか違う。
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 坂を下り、裏道を目的の「ファーム冨田」へ向かう。そう、46年前たった一枚残っていた冨田さんのラベンダー畑や。今は富良野観光の目玉で、観光客で賑わっていると耳にする。
 
 ファーム冨田に近づくと、斜面下の駐車場に車が一杯停まっているのが見えてくる。いや、まだ10時前やで。

 

 ファーム冨田に行くと、駐車場にすごい数の車、観光バス。飲食店、土産物屋。
 当然、入場料が要るのかなと思っていたら、畑の散策は無料。そうか、今は周りの店で充分どころか、たっぷりと採算がとれるんや。

 

 そんなゲスな考えは置いといて、斜面に広がるラベンダー畑やお花畑を散策する。いやはや、すごい人や。ある程度は覚悟していたが、想像を遥かに超えている。
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 せっかくやって来たラベンダー畑やけど、人込みは苦手なので、さっさと逃げ去り富良野駅へ。

 

 46年前、駅舎で寝たけど記憶はそれだけ。何も覚えていない。
 富良野の町で昼食。

 

 かつては札幌から道東に向かうメインルートだった根室本線も石勝線というショートカットができてからは、この区間はローカル線。10時の列車の次は15時までない。
 今日は富良野から輪行して札幌まで行く予定。15時まで列車が無いのは覚悟していたが高速バスの営業所を覗くと13時の便がある(事前に調べとけよ~と自分でツッコむ)。
 で、富良野―札幌は高速バス輪行。
 
 高速バスで札幌駅に着き、駅北の宿に向かう。
 札幌駅の南側も当然46年前とは違っていたが、駅の北側の変わりようは凄かった。まったく違うと言っていい。

 

 すすきのとは言わずも当時よく行った北24条で夕食をと思っていたが、土産物を物色しに行った駅地下で手頃な寿司を見つけ、それを買って夕食、ビール。町へ繰り出しても、一人で飲むのは苦手なんよね。

 

 
 8日
 朝食を食べ、早々にホテルを出る。
 自転車を組み、目の前の校門へ。

 

 中央ローン、クラ館、クラーク像、メイン道路。

 たぶん、40何年振りかの大学構内。
左:中央ローン                 右:クラブランの集合場所、クラーク会館
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  もっと感傷的になるかなと思っていたけど、酔狼の心に響くものは無かった。
 北へ少し走り、かつてサイクリングクラブの入っていた第三サークル会館の辺りを探すが、すっかり変わって何も思い出せない。
 古い校舎だったか何だったかを使った「第三サークル会館」
 サイクリングクラブ(HUCC)入部当時はいろんなクラブがここに入っていた。HUCCは二階のどんづまりで、一階にオケラ(オーケストラ)がいたのを覚えている。

 校内に散らばる古い学部の校舎はたぶんその頃のままだと思うが、第三サークル会館のあった辺りはすっかり変わってしまい、それらしき光景は見えない。それにしても緑いっぱいのキャンパス。
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 南北を貫く道路を北18条まで走り、東へ。滞在時間は10分?15分?

 

 当時、住んでいた北19条東1丁目へ向かうが、ここも何の面影も無い。「(当然やけど)変わったな~」という思いだけを胸に北へ向かう。
 北24条。なぜか中島みゆきの「ミルク32」が頭の中を流れる。

 

 北へ上がって石狩街道に合流すると、一気に車が増えたので創成川西の遊歩道に逃げ込む。これも最後には途切れて車の多い国道を走る。

 しばらく車の多い国道を走り石狩浜の中の道路に逃げ込む。この道はサロベツ原野の海沿いと同じく、何もない道路。陽射しが強い。
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 石狩川の河口近くに「はまなすの丘公園」。遊歩道をぶらっと歩く。空が広い。
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少し戻って石狩川を渡る。河口近く川幅が広い。
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 車の多い国道から逃げ、堤防上の裏道へ。国道に戻る。46年前のこの道は海沿いにアップダウンが続き厚田、浜益と寒村(漁村)だけしかなく、道路は舗装してあったよな、という朧げな記憶。比べるのもアホな話やが、車がめちゃくちゃ多い。そして暑い。

 

 まだまだ時間は早いが、走り始めも早いので、望来のコンビニで食糧を買い込み、眺めのいい所を探し、海沿いの旧国道とおぼしき道を上る。

 少し上った所に駐車場とベンチ。日本海の景色が広がる。
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 食糧補給と水分補給をしながら幼い子供を連れた若夫婦と談笑。その後、福岡から旅行中の同年輩のご夫婦と談笑。

 

 今日は当別の老師宅にお邪魔する予定。札幌の市街地や大学構内でもっと時間を使うかなと思っていたが、大都会からは逃げ出し、大学構内もあっさりやり過ごし、「とりあえず石狩浜へ行こう」程度のいいかげんなプランやった。
 まだまだ時間があるので、もう少し北へ厚田方面に向かって走ることにする。でも地図も石狩浜くらいまでロードマップをコピーして持っているだけ。ま、時間を見ながら行ける所まで行こう。五台ほどいたパトロール中の白バイの方と話をしたら、厚田の魚市場へ行く車で、通行量が多いので「気をつけて行ってください」とのことだった。

 

 丘の上を走り、上り、下り、古潭の村を抜け丘を上がる。厚田漁港への下りに差し掛かったところで上り返すのが嫌なので、ここから望来まで引き返すことにする。ほんの少しの追い風やが、追い風が助けてくれる。水分補給。汗をかいても北海道の乾いた空気が乾かしてくれるので気をつけないと脱水状態になる。

 望来から当別に向かう県道、あ、道道に入る。小さな峠を越えると農地が広がる。スウェーデンヒルズの丘を目指し坂を上る。スウェーデンヒルズは森の中の住宅地?別荘地?
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建物のデザインは統一されている
 住宅表記を頼りに老師のお宅にたどり着く。知津子さんが迎えてくれる。「お世話になります」

 

 早い時間に風呂で汗を流し、洗濯。老師と二人、録画してあるツールドフランスを見ながらビールを開ける。「いただきます」

 

 札幌からやってくるタケル夫婦を待ち切れず、食事を始める。改めて乾杯!老師手作りの料理まである。
 タケル夫妻がやってくる。るりちゃん、お久しぶり。酔狼はいろんな方に御世話になっているが、中でも老師夫婦、タケル夫婦にはお世話になりっぱなし。感謝しかない。

 

 あんな話、こんな話。あんな話こんな話。
 
 食事を終えてもまだまだ明るい。ヒルズ内の公園まで散歩。丘の上からは札幌の市街地や手稲の山々が見える。霞んで見えないが、きっと海まで一望できるのかな。

 

 ノンアルコール、るりちゃんの運転でタケル夫婦は帰宅。「またな」

 

 

 9日。
 北海道の朝は清々しい。「おはようございます」

 


 朝食をしっかりいただき、天気がいいので早々に老師宅を出て走ることにする。「お世話になりました。ありごとうございます。」
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 野幌の森林公園へ行こうと思い、昨日ロードマップをコピーしてもらった。また、今朝、当別の町を抜けた所で「亜麻まつり」をやっていることを教わり、足を伸ばすことにする。亜麻の花畑があるそうや。
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 スウェーデンヒルズのメイン道路をず~っと下る。気持ちいい。
 札沼線の線路を渡り、当別の市街地を抜け「亜麻まつり」の会場を目指す。そして当然のように、この辺りの地図を持っていない。会場近くまで行ったハズやが行きつけない。駅からのシャトルバスは見えるけどなぁ?

 

 あっさりと亜麻はあきらめ、えっ、あきらめが早すぎるって?ま、結論から言うと、九日目ともなると疲れが溜まってるんやなぁ。弱い向かい風、ちょっとした坂が堪える。

 

 なんとかかんとか昨日コピーしてもらった野幌、江別あたりの道路に戻る。
 あ、江別の町は石狩川から見れば、ちょっとした丘の上にあったんや。国道12号に出る前に勘を頼りに3番通りを札幌方面に向かう。

 

 野幌森林公園を目指したはずが、森林公園を歩く気力、体力のゆとりもなくスルーする。
 ほんの少し12号を走り、新札幌駅で輪行。早々に新千歳空港へ。荷物(自転車の入った輪行袋とフロントバッグ)を預け、フードコートで「松尾のジンギスカン」と生ビール。

 

 帰りの飛行機は空港でチェックインしたので遅かったはずやのに、なぜか窓際の席やった。雲があり、快適とは言えないが離着陸の際、地上の景色を楽しんだ。

 

 利尻礼文のOBランに参加し、前後にソロのサイクリングを組みこんだ九日間の北海道ツーリング、楽しかったなぁ。たぶん最後の北海道ツーリング。感謝感謝。

 

 あ、自転車ツーリングはまだまだ続けるので、次また、どこかへ。
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